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■「首相「中国の感染者もっと多い」 新型インフルで

【概要】麻生太郎首相が、5月、韓国の韓昇洙首相と会談した際、新型インフルエンザに関して「中国の感染者数がこんなに少ないわけがない。もっと多いのではないか」と発言、中国政府の発表に疑問を投げ掛けていたことが2日、複数の関係者の話で分かった。
 麻生氏は「中国も含めた対応が必要」と述べ、日中韓3カ国の連携の必要性も指摘。拡大防止協力を推進するにあたり、アジアでの感染の行方に大きな影響を与える中国の状況に対する懸念を共有したいとの意図があったようだが、第三国の首脳に表明したことは論議となる可能性もある。
 会談が行われた5月22日時点での感染者数は、日本が302人で中国が5人。麻生氏は韓氏に、「もっと多いのではないか」と述べた上で「中国は海外との交流が少ないから、公表されている数字でいいのかもしれないが、それでも(約13億人という)あれだけの人口がいる」と述べた。

■「派遣の労災 隠ぺい横行 : 社会保障 安心 : 共生 : 医療と介護 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

【概要】息子を転落事故で亡くした飯窪慎三さんは、事故原因となった作業台を特注し、集会でその上に立って労働環境の窮状を訴えた(4月22日、都内で)

 厚生労働省の調査によると、昨年1年間に労災で死傷した派遣労働者の数は5631人。2年連続で5000人を超え、製造業の派遣が解禁された2004年と比べて8倍以上に増えている。“労災隠し”の証言もあり、問題の根は深い。対策はあるのか。(社会保障部 大津和夫、野口博文、社会部 本田克樹)

 「正社員じゃないからという理由で安全をおろそかにしないで……」

 日本弁護士連合会が4月22日、都内で開いた労災をめぐる集会。息子を転落事故で亡くした父親の飯窪慎三さん(59)(山梨県南アルプス市)が、こう訴えた。
 長男の修平さん(当時22歳)は2003年8月、製缶工場で、ベルトコンベヤーを流れる缶のフタの検査中、立っていた作業台から転落して頭を強打。意識不明のまま、約3か月後に死亡した。修平さんは当時、工場の製造ラインに携わる請負会社の社員。実質的には、今で言う派遣社員だったという。
 修平さんは事故の2日前、電話で「作業台が狭く、落ちそうで怖い」と父親に漏らしていた。その作業台とは、足場が40センチ四方で、高さは90センチ。手すりも背もたれもない。飯窪さんは同じサイズの作業台を特注し、その上に立ってみた。「苦痛で立っていられたのは1時間程度」と明かす。
 都内の男性(58)は、ここ3年間に2度も労災にあった。3年前、資材を運搬中、立てかけてあった高さ2メートル、幅1メートル、重さ30キロの資材が倒れてきて、こめかみ部分を20センチ切った。ひどく出血したが、派遣先の社員は「タオルで押さえとけ」と言っただけ。病院に行くまで30分も放置された。
 事前の安全研修もなければ、ヘルメット着用の指示もない。「派遣はこりごり。そう思うけれど、ほかに仕事がない」とこぼした。

氷山の一角

 今回の国の調査結果について関係者が口をそろえるのは、「数字は氷山の一角」という点だ。
 首都圏の派遣会社社員は「労災の届け出はしない。派遣先が手続きを面倒くさがる。違法な働かせ方の発覚を恐れることもあるから」と「労災隠し」を認める。
 違法な労災隠しが行われるのは、派遣労働者の立場が弱いからだ。
 滋賀県の男性(34)はプラスチックの加工工場で05年春、はしごから足をすべらせ、1メートル下に落ちた。左のひざなどを打ったが、派遣会社に「労災申請は正社員でないと無理」と丸め込まれたという。健康保険を使って、治療費の自己負担分を払った。
 埼玉県の男性(27)は昨夏、自動車組み立て工場で肉離れを起こし、嫌がる派遣先を説得。労災の届け出をしてもらった。ところが、事故から1か月後、派遣会社から解雇された。労災申請で筋を通したためではないか、と疑っている。
 派遣労働者らで組織する労働組合派遣ユニオン」(東京都)の関根秀一郎書記長は「まさに使い捨てです。安全教育も、けがへの対応も不十分。派遣労働者は自分の身は自分で守るしかない」と語気を強めた。

「派遣先は神様」
 労働者軽視ともいえる深刻な事態が後を絶たないのは、そもそも、安全と補償をめぐる派遣先、派遣会社の法的な責任があいまいなことが背景にある。
 プレス機械の場合なら、手をはさまない安全装置をつける責任は派遣先の企業にある反面、作業上の注意などの安全教育は派遣会社だ。労災保険の加入対象は、実際に労働者を使う派遣先ではなく、雇用主の派遣会社。派遣先は重大な過失から労災を起こしても、労災保険では事実上、あらゆる負担を課せられない。
 なぜ法的な規制が放置されてきたのか。
 「もともと派遣は専門性の高い業務という考え方が念頭にあり、労災が続発することなど想定すらしていなかった」と打ち明ける厚労省関係者もいる。
 法的な課題に加え、関根書記長は「本来、労働者を保護すべき派遣会社が派遣先の下請け会社のようになり、深刻さを助長している」と指摘する。
 首都圏の派遣会社では「仕事をくれる派遣先は神様。私たちの仕事は、派遣先の要望に沿って人をそろえること。工場の現場など見たこともないくせに、『軽作業』と広告して人集めしている」と打ち明ける。
 建設現場の請負事業では責任があいまいにならないよう、雇用関係はなくても、元請け会社が補償の責任を負っている。この点を参考に、労働政策研究・研修機構濱口桂一郎統括研究員(社会政策)は「派遣事業でも、労働者を活用して、利益を上げている派遣先の労災補償の責任を強化すべきだ」と提言。派遣先が、労災保険の保険料の一部を含めた派遣料金を派遣会社に支払う仕組みを作る――などの案を示している。

意識低い派遣先企業
2割報告せず

 なぜ、派遣労働者の労災が減らないのか。厚生労働省の調査結果からは、派遣という働き方の問題点が浮かび上がる。
 2008年に労働災害で死傷した派遣労働者は5631人。製造業への派遣が解禁された04年に比べて8・4倍となっている。派遣労働者数は最新の07年度調査で約381万人。この数は、年度ごとの集計なので単純比較はできないが、04年度の約227万人の1・7倍だ。派遣労働者数の伸びに比べ、労災による死傷者数が急増しているといえる。
 仕事の経験期間が短いことも特筆される。例えば労災事故に見舞われた派遣労働者の全体の6割超を占める製造業をみると、3人に1人が3か月に満たない。1年未満なら62・9%を占めていた。
 労災に対する派遣先企業の意識も低いようだ。労働安全衛生法、労働安全衛生規則では、派遣労働者が休業4日以上の労災に遭った場合、派遣会社、派遣先企業の双方が労働基準監督署に対し、「遅滞なく」報告しなければならない。しかし、今回の調査で集計した5631人のうち、派遣先企業から報告されていたのは、8割の4574人で、派遣会社との報告数の差は1057人に上った。厚労省は「労災を報告しないのは法律違反になる」として、派遣先企業への指導も強化する方針だ。



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